【日産:バイオレット】WRCで活躍したLZ型エンジン搭載モデル

【日産:バイオレット】WRCで活躍したLZ型エンジン搭載モデル

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1973年1月に新発売された「バイオレット」は、ボディタイプは当初4ドアセダン、2ドアセダン、2ドアハードトップの3種類とし、サスペンションシステムは、フロントにはマクファーソンストラット式独立懸架が全車に採用され、リアには、スポーツグレードの「SSS」にのみ「510型:ブルーバード」と同様のセミトレーリングアーム式独立懸架、その他の車種はリーフ式車軸懸架が採用されました。モータースポーツでは「510型:ブルーバード」譲りのスポーツグレードである「SSS(スリーエス)」がラリー活躍しました。ヒストリーとしては1963年に初めてサファリラリーに挑戦した日産は、その後もラリーに参戦を継続しました。そして1966年に初めてクラス優勝を果たすと1969年にはクラス優勝&チーム優勝を達成し。翌1970年には総合優勝を飾り、クラス優勝とチーム優勝を合わせて史上初の完全制覇を成し遂げました。さらに1971年と1973年には「フェアレディ240Z(S30型)」で総合優勝を記録するという技術の日産として有名でしたが「ラリーの日産」という称号も与えられることになったのでした。しかし日産は、排気ガス対策に専念するためにラリー活動を一時休止することになりました。それでも、1970年代終盤に復活することになり「日産:バイオレット」が活躍したのでした。


「1977年:Nissan Violet Type KP711 the 12th Southern Cross Rally Overall-winner」

1971年に4代目の610系、ブルーバードUにモデルチェンジ。より大型化したブルーバードの弟分、というよりも実質的にはブルーバードの3代目、510系の直接的な後継モデルとして1973年に登場した初代モデルの「バイオレット(710系)」は、モータースポーツでの主役の座も510系から引き継ぐことになりました。

そして1977年にはツインカム16バルブ・ヘッドのスペシャルエンジンである「LZ18」エンジンを搭載したグループ4仕様がサザンクロスラリーで総合優勝を飾っています。


「1977年サザンクロス優勝車:日産・バイオレット(710型)」:スペック

  • 年式:1977年
  • 型式:KP711
  • 全長 × 全幅 × 全高(mm):4,120 × 1,780 × 1,400
  • ホイールベース(mm):2,450mm
  • トレッド(F/R):1,310mm / 1,320mm
  • 車両重量(kg):1,115
  • エンジン型式:LZ18
  • エンジン形式: 直列4気筒DOHC16バルブ
  • 総排気量(cc):1,991cc
  • 最高出力:200ps以上 / 7,200rpm
  • 最大トルク:21.5kgm / 5,200pm
  • トランスミッション:5MT
  • 駆動方式:FR
  • サスペンションシステム(F/R):ストラット / セミトレーリングアーム
  • ブレーキシステム(F/R):ディスク / ディスク

「1981年:Nissan Violet GT Type PA10 the 29th Safari Rally Overall-winner」

710系がフルモデルチェンジを経て「バイオレット」の2代目モデル、A10系に進化したのは1977年のことでした。そしてグループ2仕様のラリーカーでサファリに挑戦し1979年には総合優勝を飾り、1980年には連覇を達成しています。そのグループ2仕様、通称「160J」から栄光の歴史を引き継ぐことになったモデルがエンジンを換装したグループ4仕様、通称「バイオレットGT」。搭載するエンジンは「LZ18」の流れをくむ「LZ20B」で直4ツインカム16バルブを搭載していました。1,975ccの排気量から1981年仕様では最高出力:210馬力をひねり出していて、1982年仕様ではさらに最高出力:230馬力までチューニングされています。前後のサスペンションシステムはストラット/4リンク・コイル式リジッドとグループ2仕様と基本デザインは共通でしたが、パワーアップに応じて強化が施されていました。


「1981年サファリラリー優勝車:日産・バイオレットGT(A10型)」:スペック

  • 年式:1981年
  • 型式:PA10型
  • 全長 × 全幅 × 全高(mm):4,080 × 1,600 × 1,390
  • ホイールベース(mm):2,400mm
  • トレッド(F/R):1,335mm / 1,330mm
  • 車両重量(kg):1,080
  • エンジン型式:LZ20B
  • エンジン形式: 直列4気筒DOHC16バルブ
  • 総排気量(cc):1,975cc
  • 最高出力:210ps / 7,400rpm
  • 最大トルク:22.0kgm / 5,600pm
  • トランスミッション:5MT
  • 駆動方式:FR
  • サスペンションシステム(F/R):ストラット / 4リンクリジット
  • ブレーキシステム(F/R):ディスク / ディスク

「1982年:Nissan Violet GT Type PA10 the 30th Marlboro Safari Rally Overall-winner」

白地に赤と水色の日産ワークス・カラーが施された車両は1981年サファリラリーで3連覇を飾ったラリーカーで、上記のマールボロ・カラーに塗られた車両は1982年に同ラリーで4連覇を飾ったラリーカーです。


「1982年サファリラリー優勝車:日産・バイオレットGT(A10型)」:スペック

  • 年式:1982年
  • 型式:PA10型
  • 全長 × 全幅 × 全高(mm):4,080 × 1,600 × 1,390
  • ホイールベース(mm):2,400mm
  • トレッド(F/R):1,335mm / 1,330mm
  • 車両重量(kg):1,080
  • エンジン型式:LZ20B
  • エンジン形式: 直列4気筒DOHC16バルブ
  • 総排気量(cc):1,975cc
  • 最高出力:230ps / 7,200rpm
  • 最大トルク:25.0kgm/5,200pm
  • トランスミッション:5MT
  • 駆動方式:FR
  • サスペンションシステム(F/R):ストラット / 5リンクリジット
  • ブレーキシステム(F/R):ベンチレーテッドディスク / ディスク

「初代モデル:710型系」

  • 1977年:第12回サザンクロスラリーに直列4気筒DOHC・16バルブの競技用エンジン、LZ18型を搭載する2ドアハードトップがラウノ・アルトーネンのドライブで参戦、総合優勝を飾っています。この車両は現在、日産の座間事業所内にある座間記念車庫に保管されています。

2代目モデル:A10型系」

  • A10/A11型は日産のWRC参戦の主力マシンとなり、1979年-1982年の「サファリラリーで4大会連続総合優勝」を達成しました(ちなみに、1979年と1980年は2バルブヘッドエンジン搭載のグループ2マシン、1981年と1982年は4バルブヘッドエンジン搭載のグループ4マシンでの参戦)。
  • この4連覇は全て元FIA評議委員長でケニア在住の「シェカー・メッタ」氏が日産ワークス時代にドライブしたもので、WRC史上初の「同一ドライバーで同一イベント4連覇」を記録しています。PA10型のサファリラリー歴代優勝マシンは現在、メッタのマールボロ・カラーマシンも含めて全てが日産の座間事業所内にある座間記念車庫に保管されています。
  • 1980年:第28回サファリラリーで総合優勝(連覇)。
  • 1981年:第29回サファリラリーで総合優勝(3連覇)。
  • 1982年:第30回サファリラリーで総合優勝(4連覇)。この年は後継ラリーマシンとしてS110型シルビアベースの新型グループ4マシンが用意されていたが、信頼性などの問題を抱えていたため、サファリラリー4連覇目が掛かっていた「シェカー・メッタ」氏は、すでに生産終了していた前年型のPA10型グループ4マシンを選択しました。これを快く思わなかった日産はワークス・バックアップを拒否。このため「シェカー・メッタ」氏は、プライベーターとして参戦することになってしまいました。参戦した「シェカー・メッタ」氏のマシンは前年までの日産トリコロールカラーではなく、白いボディにマールボロ・レッドがペイントされていました。結果としてS110型シルビアベースの新型マシンは信頼性不足によるマシントラブルによって徐々に遅れ、最高位は3位だったものの「シェカー・メッタ」氏の「バイオレット」は総合優勝し、4連覇を達成しました。勝負を優先した「シェカー・メッタ」氏はラリー史に名を残しましたが、この一件以降日産とのワークス契約がかわされることはなかったのでした。
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