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1979年(昭和54年)に登場の3代目モデルの「シルビア(S110型)」は、姉妹車として誕生した「ガゼール」も含め、スポーツ&スペシャリティを志向したクルマですが、同時にスーパーシルエットレースや「WRC(World Rally Championship:世界ラリー選手権)」など、モータースポーツに縁の深いモデルでもありました。
この「日産:240RS」は、WRCへの参戦をにらんで、当時のグループB規定に基づく競技用車両として「S110型:シルビア」をベースに開発され、グループBの最低生産台数である200台あまりが生産されました。当時は日産自動車が「ラリーの日産」と呼ばれていた時代、同社の歴代マシンは、サファリラリーに代表される長距離耐久ラリーを得意としていたのでした。実際にそこで活躍したのが「510型:ブルーバードSSS」、「S30型:フェアレディ240Z」、「PA10型:バイオレット」などで、抜群の耐久性で好成績を挙げ1970年代のラリーシーンを彩っていました。その後、1980年代に入るとFIAの車両規定が市販車をベースとしたグループ4からグループBに変更されることになり、12カ月間に200台だけベースとなるホモロゲーションモデルを生産するという規定でした。
その規定に合わせて開発されたのが「日産:240RS」だったのです。生産台数の内訳としては、主に左ハンドルのモデルが販売されていますが、極少数右ハンドル車が存在しました。一説では、総生産台数の内、左ハンドル車が150台、右ハンドル車が50台生産され、この中の30台ほどがWRCや各国の国内ラリー選手権に使用されたとされているということです。 ベースとなったのは「S110型:シルビア」で、エクステリアデザインとしてのポイントは、張り出したオーバーフェンダー、前後バンパーやボンネット、トランク、リアスポイラーをFRP製とすることで軽量化されているところです。
パワーユニットとなるエンジンは名機と呼ばれる「FJ24」型エンジンで、市販モデルで「R30型:スカイライン / S110型シルビア」などに搭載されていた「FJ20」型エンジンとは全くの別で共通パーツは皆無です。ちなみに「240RS」のホモロゲーションモデルおよびカスタマースペック車(ロードモデル)に使われたのは、ボア×ストローク:92.0mm×88.0mmで排気量:2,340cc、圧縮比:11.0で最高出力:240PS / 7,200rpm、最大トルク:24.0kgm / 6,000rpmの「FJ24」型エンジンとされています。キャブレターはミクニ製ソレックス44Φキャブレターを2基装着しています。
加えて、「240RS」のワークスカーには最高出力:280PS / 8,000rpm、最大トルク:26.5kgm / 6,400rpmを発生する「FJ24改」エンジンを搭載するエボリューションモデルが存在しており、燃料供給システムはいずれもキャブレター仕様でした。また「240RS」登場の前年、ベースモデルとなった「S110型:シルビア」に「LZ20B型(215PS)」エンジンを搭載したグループ4仕様車が、1982年の第30回サファリ・ラリーに出場し、総合3位を獲得しています。さらに、「LZ20B」型の排気量アップバージョンとなる「LZ24B」型エンジンが開発され、同じくグループ4仕様の「S110型:シルビア」に搭載され、数戦の海外ラリーに参戦しています。これらは翌年に発表を控えた「240RS」のテストベッド的な車両だったといわれています。
トランスミッションは、オリジナルで装着されているのはクロスレシオの5速MT。ファクトリー仕様ではシンクロレスのドグクラッチミッションが採用されていました。ミッションは1速が左下にあり、競技中に常用する2-3速間のチェンジを素早く決められる「ローバック」タイプのクロスレシオ仕様となっています。
サスペンションシステムは、フロントはストラット、リアが4リンクリジッドとなっています。ここはサファリラリーで無敵を誇った「PA10型:バイオレット」の頑丈な足を継承しているようです。ただし、サスペンションの可動部に使われるゴムブッシュはピロボールに置き換えられて、より正確な動きを可能としています。
WRCでは、1983年のニュージーランドラリーでの2位が最高位で、得意のサファリでの優勝は出来ませんでした。
生産台数が200台と登場当時で、すでに貴重なモデルであった「日産:240RS」は、日本国内においての右ハンドル仕様ともなれば、現存数は10台以下ともいわれるモデルです。市場における流通数は皆無であり800万円~ASK(価格応談)という状況のようです。