【ハコスカ・C10スカイラインGT-R】プロトタイプが実在した
あわせて読みたい記事:【湘南純愛組!】登場車種ー嘉手納南風の紫のケンメリスカイライン
あわせて読みたい記事:【BHオークション】ハコスカGT-Rレーシングのスペック・価値
あわせて読みたい記事:【ワイルドスピードMEGAMAX】劇中車ハコスカは本物GTR?
日本の名車の代表格とされる「ハコスカ」。今や「ハコスカGT-R(KPGC10型/PGC10型スカイラインGT-R)」は海外においてもコレクターズアイテムとされるモデル。希少なモデルに「プロトタイプ」が1968年10月26日に発表された。この時期は東京・晴海の国際貿易センターを会場で17日間にわたって第15回東京モーターショーが開かれていた期間。その「1968年東京モーターショー」に参考出品された4ドアGT-Rのプロトタイプを再現したモデルが実在する。その忠実なレプリカに注目。
まず、「1968年東京モーターショー」の概要について。この年のモーターショーでは、当時の運輸省が型式認定を受けていない車両の展示を1社1台に限定したこともあり、形だけのショーカーはほとんどなくなっていました。そのため各自動車メーカーのブースには、現行生産車か近く発売予定のクルマのみが展示されていたのです。そして、注目の日産のブースには、それぞれ一段高い展示台に載せられた2台のスカイラインが展示されていました。展示された2台のボディカラーはシルバーに塗られた4ドアボディで、1台はモーターショーの直前に発売された「スカイライン2000GT」。先代(S54)スカイライン2000GT-Aに相当するモデルで、シングルキャブレターの2L直列6気筒SOHC、L20型エンジンを搭載。86万円の車両価格も発表されたグランドツーリングカー。そして注目のもう1台の4ドアスカイライン。一見すると外観の派手さは全くない展示車両。しかし、その実態を知ると驚きを隠せないものだった。傍らに掲げられた看板には「R380エンジン搭載車」。「スカイライン2000GT」の参考出品車としてお披露目されたこのクルマこそ、後に「PGC10型スカイライン2000GT-R」としてデビューする車両のプロトタイプでした。つまりGT-R伝説、その序章はここから始まったのです。
「ハコスカ(PGC10型スカイラインGT-R)プロトタイプ」レプリカ
あわせて読みたい記事:【日産:C10型・ハコスカ輸出仕様】 2400GTの価格・仕様
GTプロトタイプに装着されていたカムカバーの実物。今回プロトタイプレプリカを制作するにあたり、量産仕様のS20型エンジンに装着した。しかし、ポン付けできるものではなく、装着するにあたっては、6本あるスタッドボルトの長さが足りず、ボルトを10mm延長する加工が必要だったということです。また量産仕様のカムカバーは、NISSANと2000の浮き出し文字が1対しかなく、書体も微妙に異なる。レプリカのエンジン全体の様子。エアクリーナーボックスとタコ足も量産仕様とは形状が違うものに交換。
「第15回東京モーターショー」で、スカイライン2000GTの参考出品車として展示された「GTプロトタイプ」は、会場で「R380エンジン搭載車」とアナウンスされていたように、後にGT-Rとして発売されるモデルでしたが実際に市販されたGT-Rとは細部に違いがありました。
「GTプロトタイプ」のレプリカは実車に使われていたパーツが装着。車両を製作したのは、千葉県香取市にある「プリンスガレージかとり」の代表である「香取孝」氏。今回の「GTプロトタイプ」のレプリカを製作するにあたって、決定的ともいえる主要パーツを10年以上前に入手。それはモーターショー展示車だけに付いていたアルミ製のカムカバー。「NISSAN 2000」の浮き出し文字が2対ある特徴あるデザインで、その仕上がりから砂型鋳造による製作。「第15回東京モーターショー」の会場では、このカムカバーを装着したエンジンのうち、1機が車両に搭載され、もう1機はエンジン単体で同じ日産ブース内に展示されていたということです。つまり少なくとも2枚同じカムカバーが存在していた。「香取孝」氏は「旧プリンス系の日産試作工場から出た廃材を、私と友人で倉庫ごと買い取りました。その中に今回のカムカバーが入っていました。今となっては本当に貴重なパーツを手に入れたことで、いつかはGTプロトタイプを再現したいと思っていましたが、ようやく形にできて、満足しています」とコメントしています。
「GTプロトタイプ」は、前後にL20型エンジン搭載の「2000GT」のエンブレムをそのままに、ベースを青から赤に塗色変更したエンブレムが取り付けられていた。そう、参考出品された時点では、「GT-R」ではなく、「GTプロトタイプ」だったということなのです。
当時の資料によれば「GTプロトタイプ」の段階で、すでに「PGC10型スカイライン2000GT-R」の内装の仕様がほぼ盛り込まれていたようです。タコメーターは1万rpmまで刻まれ、スピードメーターも240km/hまで表示。そしてラジオと時計の場所には蓋がつき、空調レバーは付いていなかったところが実車と異なるポイント。
前席はバケットシートを装着。後席はブラックのビニールレザーシート。
「第15回東京モーターショー」で、スカイライン2000GTの参考出品車として展示された「GTプロトタイプ」のレプリカ。後に「PGC10スカイライン2000GT-R」となるモデルで、リアフェンダーアーチのサーフィンラインは、すでに途切れて通称Rカットが施されたフェンダーとなっていました。
この車両は、量産仕様の「GT-R」をベースに、当時の参考出品車に使用されたであろう本物のパーツを使いながら製作されたレプリカで、モーターショー当時の姿を忠実に再現している個体。「GT-R」の量産仕様では前後ともにエンブレムの文字は、ベースが赤の「GT-R」となるが、この参考出品車では、「2000GT」のエンブレムのままベースが赤に変更されたものを装着。
また参考出品車では、GT用のホイールキャップを装着。タイヤサイズは6.45H-14で、高速Hレンジのバイアスとなる。
外観上の特徴のひとつが、なぜか廉価版用の丸形板ミラーとなっている。同時に展示されていた「2000GT」は上級グレード用の角形板ミラー。
左右のフェンダーには、赤のGTエンブレムが装着。「S54型スカイライン」の青バッジ、赤バッジを受け継ぐかたち。
「香取孝」氏のコレクションで、今回の参考出品車用のものではないが、写真のように外観は一見同じでも、裏を見ると上が試作品であることが分かるという例。ムクの材料から削りだして、ワンオフでエンブレムを製作していたことがわかる。当然、重量も重くずっしりとしている。デザイン検討などをしていたことがうかがえる品物。
1968年10月に開催された東京モーターショーでのお披露目から約3カ月後の69年2月に、「PGC10型スカイライン2000GT-R」が正式に発売される。そして、今回のレプリカは、その東京モーターショーに出品されていた参考出品車両を忠実に再現したレプリカで一部には本物のパーツが使用されている個体でした。
この記事へのコメントはありません。