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【シンガー・ポルシェ911】F1の技術が投入された最強のマシン
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現在では圧倒的な人気を誇り価格が高騰し続けている空冷の「ポルシェ・911」にF1の技術を惜しみなく投入しカスタマイズされたマシンが登場し注目されてます。このマシンは、名門「ウィリアムズF1チーム」の関連会社とアメリカのレストア専門企業によって仕上げられました。それは空冷ポルシェ特有の空気抵抗やエンジンの熱といった問題をいかに解決しながら、空冷最強マシンへと仕立て上げられていったようです。「ポルシェ」の歴史を振り返ると1964年にデビューした初代モデルは、エレガントで扱いやすく、運転するスリルがあり、絶えず進化しつづけ、熱狂的なファンを今でも獲得している名車です。ロサンゼルスに拠点を置くレストア企業の「シンガー」社は、「ポルシェ・911」のさまざまなレストアを専門とし、ときには再構築も手がけている企業です。それに対する「ウィリアムズ」は、F1チーム向けに開発されたテクノロジーを他業種に応用しています。では、どのように空冷最強マシンは誕生したのでしょうか。
「徹底した軽量化とハイパワー化」
- (出典:wired.jp)
このカスタマイズプロジェクトは「ダイナミクスと軽量化の研究」と呼ばれ、レストアの依頼人が所有する1990年製の「ポルシェ・911」を使って始まったものでした。その研究の成果が、2018年7月にイギリスで開催された「グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード」で観客を驚かせ、そして「ペブルビーチ・コンクール・デレガンス」でアメリカに上陸し明らかになりました。
- (出典:wired.jp)
「空冷最強マシン」というと、そのイメージはドアの代わりにむきだしのメッシュパネルを使ったような、飾り気のないレーシングマシンを想像するかもしれません。しかし、この「空冷最強マシン」は美しく、つややかに輝くホワイトの「ポルシェ・911」であり、特注のカーボンファイバー製シート、イエローのトリム、そしてダックテールタイプのリアスポイラーを装備しています。
- (出典:wired.jp)
なんと、その車両重量は、「3,000ポンド(約1,360kg)」のオリジナルより「1,000ポンド(約453kg)」近く軽く、最高出力:500psとオリジナルの2倍に増加しています。しかも、それでいて「ポルシェ・911」のオーナーが愛する「RR(リアエンジンの後輪駆動)」という特質を備え、クラシックな911のように走るということです。
「エアロダイナミクスの最適化」
- (出典:wired.jp)
ベースモデルの1990年製の「ポルシェ・911」がいかに素晴らしいクルマでも、F1エンジニアの考える完ぺきさとは比較にならないものでした。「ウィリアムズ」のエンジニアは、現代のレースカーの仕事をするのに慣れています。数値はデジタル化され、ボディ剛性、シャシー、サスペンションシステム、ステアリングなど入力はほぼデジタルという世界です。「乗車性やハンドリングのエンジニアのところに出向くのはおかしな話です。相手は『こんなのめちゃくちゃだ』と言います。『そうとも、すごいだろう?』とわたしは返します。まるでコメディですよね。ヴィンテージものを、言ってみれば宇宙船のようなクルマをつくっているF1チームに持ち込んだわけですから」とエンジニアはコメントしています。最大の課題のひとつは気流の制御だったそうです。最初に「ウィリアムズ」のチームは、車両上方の気流をモデル化する「計算流体力学(CFD)」パッケージを用いて、ヴァーチャルに「ポルシェ・911」を走らせてみたそうです。すると、空力については「悲惨」な評価が出たようで、チームはクルマがスピードを出すと、フロントもリアも浮き上がり、安全なハンドリングと地面をグリップするという観点で考えると、かなり厳しい結果だったようです。
- (出典:wired.jp)
そしてオーナーは、ダックテールタイプのスポイラーの取り付けを希望していました。これは「ポルシェ」が1972年製の「ポルシェ・911 2.7RS」に最初に取り付けたもので、発進時に駆動輪である後輪にダウンフォースを加えることで、加速力を高めるものでした。ところが、「ウィリアムズ」のチームがスポイラーをシミュレーションに反映させても、何も起こらなかったというのです。
- (出典:wired.jp)
最終的にチームは解決策を見つけ、サイドからは見えないルーフの一部をカットすることで空気を下に流し、スポイラーに当たるように再設計したのです。これによって、ダックテールは設計どおりに機能するようになったそうです。チームが施した空力関連は、どれも外からは見えないものでした。フロントバンパーには微妙な修正が加えられていますが、底面は気流を制御してダウンフォースを改善するために、完全に再設計したのです。さらにチームは、後部のエンジンカヴァーの下側の気流を調節して、空冷式のままパワーアップしたエンジンの熱がきちんと排出されるようにしました。これによって、水冷ではないエンジンの冷却能力を高めました。
- (出典:wired.jp)
開発中のある時点でエンジニアたちは、円筒形に再設計された新しいテールライト部から熱を排出することも検討していました。しかし、それはうまくいかなかったということです。空力の専門家は、フロントの吸気口と空気の経路を再設計し、スプリッターを追加することでフロントの浮き上がりもなくしました。エンジニアは「ポルシェは本当に奇妙なことをなしとげました。1960年代に開発したクルマのコンセプトを、いまも引き継いでつくり続けているんですから。しかも常にちょっと控えめで、途方もなく高いわけではないけれど、常に最高のパフォーマンスを発揮するのです」とコメントしています。
- (出典:wired.jp)
こうして「シンガー」社と「ウィリアムズ」による最新のアップデートが施されたことで、1990年製の「ポルシェ・911」は空冷最強マシンへとカスタマイズされていきました。
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