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世界的な日本の国産名車として知られる「ダットサン(日産):フェアレディZ」は、1969年に先代モデルとなるオープンボディの「ダットサン:フェアレディ(SR311/SP310)」の後継モデルとしてデビューしました。デビューに至るまでの開発は、1960年代当時、アメリカ日産の社長であった「片山豊」氏でした。「ダットサン・フェアレディ(SR311)」でモータースポーツでは成功を収めていたものの、市場では年々厳しくなる北米の安全基準に適合できなくなると考え開発がスタートしました。自身はインタビューで「ジャガー・Eタイプのような車を造ってくれ」と要望を出したと述べており、初代モデル「フェアレディZ」のエクステリアデザインは優雅で美しいボディシルエットが描かれました。さらに「フェアレディZ」のシャシーポテンシャルは高度なもので、軽量なモノコックボディに、前後輪ともストラット式サスペンションによる四輪独立懸架を備え、市場で先行する「ジャガー・Eタイプ」や「ポルシェ・911」などと競えるほどに仕上げられました。
ベースモデルとなっているのは、もちろん「フェアレディZ432」ですが、このベースモデルもレーシングエンジンの「S20型」エンジンが搭載していたり、ソレックス製3連キャブが標準装備されていたりと、まさに特別モデルでした。
「フェアレディZ432R」となると、ボンネットはFRP製、ボディ外板には標準モデルよりも0.2㎜薄い鉄板が用いられていました。また、サイドウインドウやリアウインドウは、ガラスではなく軽量化を目的としてアクリルが採用されていました。これによってベースモデルの「フェアレディZ432」よりも100kg以上の軽量化が図られていたのです。
また燃料タンクは耐久レースに備えてベースモデルの60リッターから40リッター増量された100リッターの専用タンクが装備されていたのでした。空力性能の向上のためにエンジンアンダーカバーも装備していました。ルーフモール(ステンレス製モール)なし、ライトカバーはオプションパーツです。またベースモデルのルーフには、アンテナが装着されている部分がメクラキャップとなっています。
パワーユニットとなるエンジンは「S20型」で「フェアレディZ432」と同じであるものの、レース用でチューニングが施されることが前提だったためにエアクリーナーやエアクリーナーボックスは取り外されて、キャブレターにファンネルが取り付けられた状態、いわば、むき出しでスパルタンな仕様でした。
それでも、CDI装備による点火システムでしたがエンジンスペックそのものはボア×ストローク:82.0mm×62.8mm、圧縮比:9.5に最高出力:160ps/7,000rpm、最大トルク:18.0kgm/5,600rpmとなっており、「フェアレディZ432」と変更はありませんでした。
それでも、オイルクーラーは標準装備されています。ミッションは71A3型、デフはR192を装着。ブレーキマスターバックは無し。
徹底した軽量化のためにラジオやヒーターは取り外され、ドアの内張りは簡素化されレギュレータ(ハンドル、ドアの開閉はヒモ)はなし、センターコンソールもなし。ダッシュボードの両側噴き出し口や時計部分はメクラキャップに変更、とインテリアは、かなり簡素化されています。
タコメーターは、10,000rpmフルスケール。そして、ステアリングロックが外されており、メインキーはシフトノブの後ろのトグルスイッチのみ、リクライニング機構の付かないフルバケットシート(表皮:グレー)を標準装備にシートベルトは運転席にしか付いておらず、室内マット類はビニール製で室内にロールバーを装着すれば、レースに出場可能な仕様となっていたのです。
「生産台数」:型式は「PS30SB」となっている「フェアレディZ432R」のボディカラーは、「グランプリオレンジ」の1色のみの設定だったということです。30台前後が生産されたものの、現存しているのは10台以下とも言われている超貴重モデルです。一説では、オイルショックによる「240ZG」や「Z432」の生産中止が相次ぎ、在庫処分として数台の特別モデルとして「Z432R」が限定で市販されたということです。
「中古価格」:中古価格としては、現存数も極めて少ないことから「ASK・価格応談」であり、2015年頃では「5,000万円以上」という価格帯だったようです。ちなみに「Z432」でも1,000万円以上~「ASK・価格応談」が中古価格の相場であり、「Z432」は「ハコスカGT-R(PGC10/KPGC10)」と同じような状態となっています。
「S20型」がエンジン搭載され、軽量化が施された「フェアレディZ432R」は、モータースポーツで活躍が期待され、日本国内のレースに投入されたものの、マシン自体は扱いづらいという評価を受けることになりました。その一つの理由は前後の重量配分が、「KPGC10型:ハコスカGT-R」の方がバランスが良かったので、「フェアレディZ」はアンダーが出やすく、サーキットでは扱いにくかったというものです。そして最大の理由として挙げられたいたのは「振動」でした。これは「S20型」エンジンに起きてい問題で「S30Z」においては、このトラブルがさらに悪化することになっていたようです。「Z432R」では「S20型」エンジンとプロペラシャフトが共振してしまい「KPGC10型:ハコスカGT-R」以上の振動が起こっていたということです。原因とされたのはドライブシャフトがデフに対して水平ではなく、後方にキャンバーがついている(ドライブシャフトが、斜めに付いている)ので、高速走行時に振動が出てしまうということです。これが、ドライバーにとっては、マシンを操る上で問題となっていたということです。しかし、このトラブルですが「L型」を搭載した「S30」でも同様の問題が起きていたものの、問題にはされないほど振動の共振による影響はなかったということです。しかも「Z432」だけでなく、昭和46年式までの「グレード(L型搭載車)」にも見られていましたが、昭和46年のマイナーチェンジで改善されたということです。それでもモータースポーツでの目立った活躍はありませんでした。