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国産旧車の中でも王道的な存在といえるのが、「トヨタ・2000GT」や「日産・スカイライン(ハコスカ・ケンメリ)」などかもしれません。特に「日産・スカイライン(ハコスカ・C10系)」は、オリジナルに拘る方もいれば、フルカスタムを施す人まで、幅広いファンがいます。しかし、ハコスカの中でもメジャーな存在として注目されるのは、「GT-R(KPGC10 / PGC10)」もしくは「GT-R仕様(KGC10 / GC10)」が最も多いといえます。この「GT-R仕様」というのは、拘ればエンジンをL型からS20型への載せ替えになるのでしょうが、ほかにもリアのクリアガラス、100リットルタンク、オーバーフェンダー、エンブレムなどがメジャーな「GT-R仕様」といえるでしょう。しかし、それほどのまでに魅了し続けるルーツはどこにあるのでしょう。
「ハコスカ(C10系)」は、1968年8月のフルモデルチェンジでデビューしています。日産との合併後初めて新規発売されたモデルとなっています。「羊の皮を被った狼」として「スカイライン神話」となった「S54B:スカイライン 2000GT-B」の後継として登場し、「GT-R」においては、レーシングエンジン直系の「S20」エンジン搭載、モータースポーツにおいては49連勝という金字塔を打ち立てた。ネーミングとしては、当時のツーリングカーのことをハコと呼んでいたことから「ハコスカ」と呼ばれるようになりました。エクステリアデザインから「ハコスカ」と呼ばれるのも理解できます。
当初のグレード展開は、スタンダードとデラックスのみでした。1968年10月に直列6気筒エンジン搭載のGT(GC10型)を追加。S54型同様、フロントノーズを延長しているが、S54型と違い、開発当初から6気筒化を配慮した設計構造とデザインを備えており、6気筒モデルの方がバランスの整ったエクステリアデザインでした。
丸目4灯のフロントは、アメリカンテイスト溢れるデザインで「ロードランナー」、「チャージャー」のようなデザイン。年式によって「3ピース:初期型」、「1ピース:中期型」、「後期グリル」と変更されています。
サイドはサーフィンラインが特徴的なリアフェンダー、リアは「ハコスカ」は丸テールではなく角型テール(初期型:ワンテール)となっています。
GT-Rの4Drセダンは木目パネルにタコメーター、スピードメーターの間に水温計、油温計が装備されています。
2DrのGT-Rはブラック基調に6眼メーターが装備され、レーシーなデザインとなっています。
4ドアセダン(C10型)、エステート(WC10型)、バン(VC10型)が発表されたエンジンはプリンス製の直列4気筒OHC1,500cc G15型を搭載していました。先代モデルから足回りはフロントがマクファーソンストラットとコイルスプリングの組み合わせに変更されリアはリーフリジッドが採用されました。デラックスにはシート形状とトランスミッションにより、ファミリーデラックス(3速コラムシフト・ベンチシート)、ツーリングデラックス(3速コラムシフト・セパレートシート)、スポーティデラックス(4速フロアシフト・セパレートシート)の3種のほか、女性仕様の「Lパック」がメーカーオプションとして用意され、バリエーションを確保していました。
1968年10月直列6気筒エンジン搭載のGT(GC10型)が追加されましたが、S54型同様、フロントノーズを延長しているものの、S54型と違い、開発当初から6気筒化を配慮した設計構造とデザインを備えていました。また、「S54型:スカイライン」に搭載されていたプリンス製G7型エンジンに代わり、日産製直列6気筒OHC2,000ccのL20型(シングルキャブ)を搭載していました。発売当初はかまぼこ型シリンダーヘッドと呼ばる後年主流となるL系エンジンとは形状が異なるエンジンが搭載されました、最高出力は105馬力。1969年以降L20型エンジンを搭載する全車種で新設計のエンジンに順次切り替わり、115PS(レギュラーガソリン仕様)となりました。新旧を区別するため、新型をL20Aと呼称(車検証上の原動機の型式に変更はない)していましたが、旧エンジンの淘汰にともない、後年は新型もL20と呼称するようになりました。サスペンションは、フロントは4気筒同様のマクファーソンストラットであるが、リアはセミトレーリングアームとコイルスプリングへ変更され、4輪独立懸架が採用されました。
現在においては世界的なスーパースポーツマシンとなっている「日産・GT-R」のルーツは、50年前に始まった。そのルーツの初代モデルとなる「スカイライン」の「GT-R(PGC10型:4ドアモデル)」は、1969年に「通称:箱スカ」としてデビューしました。シリーズとしては3代目「スカイライン」にあたり、ベースグレードは直列6気筒SOHCでしたが、「GT-R」は「S20型」エンジンを搭載したグレードとして登場しています。実は初代「GT-R」登場の背景には、先代モデルの2代目「スカイライン 2000GT-B(S54B型)」にさかのぼります。「スカイラインGT」は1964年にツーリングカーレースのベースモデルとして開発されたマシンでした。その後、市販モデルとして1965年に登場した「スカイライン(2000GT-B:S54B型)」の後継モデルとして、3代目「スカイライン」にレース仕様の高性能グレード「GT-R」を登場させたことがはじまりです。
1969年に登場した、初代の「GT-R(PGC10型:4ドアモデル)」に搭載された「S20型」エンジンは、日産の純粋なレースカー、プロトタイプレース車である「日産・R380」の「GR8型」エンジン技術をもとに開発されたものでした。
このスペシャル市販エンジンは、排気量は1,989cc、直列6気筒でDOHC、しかも4バルブ仕様を搭載していました。実に当時のフェラーリのレーシングマシンが2バルブ仕様のエンジンだったことを考えると、その特殊さがわかります。また最高出力は、当時の高性能車向け燃料の「有鉛ガソリン」仕様で160PS/7,000rpm、最大トルクは、18.0kgf·m/5,600rpm となったいました。これは、市販用に抑えられたセッティングであり、キャブレターをレースオプションであったソレックス製44PHH、もしくはウエーバー製45DCOEにするだけで最高出力は200PS前後まで簡単にチューンアップできると言われていたのでした。当初は「S54B型:スカイライン」と同じウェーバーキャブを装着する予定だったのですが、国内の「三國工業」がソレックスキャブのライセンス生産を行なうようになったため、ソレックスN40PHH×3機をチョイスしたということです。初期のセダンは有鉛ハイオク仕様の”K3ヘッド”を搭載していました。また、S20エンジンのパワー特性はGT‐Rのエキゾーストパイプが前3気筒、後ろ3気筒ずつの3 IN 1が2系統となっており、安定した流速を確保し効果的に排気をおこない、燃焼室内での高効率な燃焼を得ることにありました。そして、デュアルマフラーとすることで低速から高速までフラットなトルクカーブを得ることができ、低中速中心の日常用途から週末の高速ドライビング、サーキット走行と幅広い用途を想定した仕様でした。
しかも、後期型の「GT-R(KPGC10型:2ドアモデル)」のワークスマシンは、燃料供給をルーカス社製の機械式インジェクションに交換しており、最終的には250PSから260PSまで出力していたというのです。それも、常時9,000rpmまで回しても壊れない耐久性を持っていたというから驚きです。そして、初代「GT-R」は、当初4ドアセダンとして登場しており、一見すると当時の上級セダンですが、タイヤの取付幅を広げたため、よく見ると通常モデルとの違いがわかる程度でした。それゆえにエンジンをかけた時の「S20型」エンジン音、キャブレターの吸気音や排気音から「羊の皮を被った狼」として存在感を表わしていました。
GT-Rは初期からシートはレース参戦も考慮し、リクライニング機構を持たない当時としては本格的なバケットシートを採用していました。シートベルトは2点式が標準でした。ホイールベースは2640mmと、R33GT-Rが登場するまでの26年間歴代で最長となり、5人が十分に座れるスペースが確保されていました。リアシートは基準車ベースモデルと素材などは共通でした。インパネ内には240km/hのスピードメーターと、7500rpmからがレッドゾーンとなるタコメーター、中央に水温計(上)と油圧計(下)が装備されています。レースベース車と考えられていたGT-Rには内張りはありません(本来ならばスペアタイヤが中央に取り付けられる)。タンクは100リットルが装備されています。その後、「GT-R」はマイナーチェンジが施され、2ドアハードトップモデルに移行し、4ドアから2ドアになるという変化を遂げています。2ドアモデルになることで、ホイールベースを70mm短縮しフレーム剛性とコーナリング性能を向上させています。これは設計の際に、当時最新のコンピューターを使ってホイールベースやギヤ比を設定し、当時の富士スピードウェイのバンク付き6kmフルコースのラップタイムで2分を切るために導き出した数値であると言われています。また、外見では広がったタイヤの幅に対応するため、オーバーフェンダーを装着したことも初代「GT-R(後期型)」の特徴となっています。
また、当時のGT-Rはレース仕様のため、快適装備はないクルマでした。全てのガラスが青色の熱線吸収タイプではなく4気筒モデルのスタンダードと同じ無色透明タイプになり、リアデフォッガーやモール類、装飾類、ホイールカバーが装備されていません。また冷暖房をはじめ、ラジオ、時計など今では当たり前の装備もオプションのほか、助手席シートベルトまでもなかったというレース用に割り切られた仕様だったといえます。
市販車のカタチをしたツーリングカーレースの参戦を目的として開発された「GT-R」。時代背景は、異なるものの歴代「GT-R」のなかでもトップの成績を残しています。初代「GT-R」のレースデビューは、1969年のJAFグランプリレース大会でしたが、そのデビュー戦で優勝を飾ります。とはいえデビュー戦は簡単に勝ってしまったというわけではなく、相手チームに対してペナルティが与えられたための優勝という苦しいスタートとなりました。
しかし、その後は順調に勝利を積み重ねていき、49連勝という金字塔を打ち立て、結果的には通算50勝という記録を打ち立てました。ちなみに4ドアモデルのGT-R(PGC10)は、2ドアハードトップ(KPGC10)よりも多い36勝を挙げています。総生産台数は「PGC10型:4ドアモデル」が832台、「KPGC10型:2ドアモデル」が1,197台となっています。
「ハコスカ」という愛称は海外でも認知され人気となっており、希少価値に加えて海外においても取引され価格は全般的に上昇し続けています。
オリジナルの個体は「GT-R」くらいで、「GT」、「GT-X」などは「R仕様」にカスタマイズされた個体が多いです。またオリジナルの「L20」エンジンから「L28」エンジンに載せ替え、ボアアップ、キャブレターやタコ足、マフラーなどチューニングされた個体が多いのも特徴です。当然ですがフルレストアされている個体も多いもののデビューから50年以上も経過しているために維持するための費用を十分に考慮しておく必要があります。そして、バン、エステートなどのショートノーズモデル(G型エンジン搭載)は、市場における流通量が非常に少なく「ハコスカ」シリーズの中でも希少モデルとなっています。
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国産旧車の中でも王道といえるのが「日産・スカイライン(ハコスカ・ケンメリ)」シリーズにおける「GT-R仕様」のカスタムでしょう。まずはエンブレム変更に始まり、グリルの変更やオリジナルのサーフィンライン(リアフェンダー)のカットにオーバーフェンダーの装着、クリアガラスの変更といった感じにカスタマイズされている個体が多いのではないでしょうか。もちろんベースモデルはレースモデルのレプリカですから2HTや前期4ドアモデルかもしれません。またパーツの供給からエンジンはRB系に載せ替える個体も多いです。街道レーサー仕様のカスタマイズでは、「高橋国光」仕様のワークスカラーリングワークス、オーバーフェンダー、ビタローニミラー、チンスポイラー、板バネのリアスポイラー、バンパーレスにオイルクーラー、鉄チンワイドホイールが定番スタイルかもしれません。ゼロヨン仕様やストリート仕様、サーキット仕様などは、エンジン載せ替えによりL28エンジンにソレ、タコ、ディアルというキャブレター、エキゾーストマニホールド、マフラーの変更が定番で、ボアアップ、ハイカム、ピストン、クランク、フライホイールなどエンジン内部にチューニングを施しR200デフやトランスミッションなどもカスタマイズしている個体も多いです。最近では、パーツの流通の面やメンテナンスの面などからエンジン制御システムは、キャブレターからインジェクション仕様へ変更し「RB系」エンジンを搭載したり、日産に拘らずエンジンやパーツを流用している個体も増えてきているようです。また「GT-R」は、希少価値の観点からもオリジナルの個体が多いのも特徴でしょう。