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1973年10月に株式会社エッチ・ケー・エス(HKS)が設立されて以来、多くのレーシングマシンやチューンドマシンを手掛けてきたブランド。そのHKSが「日産・スカイラインGT-R(BNR32型)」で目指したのは、ヨーロッパのチューナーの世界観でした。ルーフ社やケーニッヒ社と同様にコンプリートカーを作ろうと1989年に計画されたのが、「ZERO-R」の開発でした。当時と現在を比較するならば、ストリートでも堂々と乗れるチューニングカーは今でこそ当たり前となっているが、世間の風当たりが強かった当時としては、非常にハードルが高いものでした。
保安基準にも適合させて車検に通るようにすることだけでなく、コンプリートカーとしての耐久性や信頼性についても、十分な性能を備えている必要があります。
そのためBNR32のカスタマイズである「ZERO-R」では谷田部での高速走行テストを繰り返したほか、アウトバーンやニュルブルクリンクにも車両を持ち込み、徹底的ともいえる走り込みを重ねて信頼性を実証していくという努力の積み重ねに開発が進められていきました。その開発とテストには2年以上の期間を費やしたということです。そのことからHKSの意気込みを感じることができます。そして「ZERO-R」が完成したのは1991年のことでした。
当時、パワー重視のチューニングの中で空力面まで考え抜かれたフォルム、エアロは「ZERO-R」の専用設計です。最高速の300km/h以上での使用まで想定し、フロアのフラットボトム化まで果たされているのです。また、4名乗車から2名乗車へと変更し燃料タンクは、リヤシート下へと移設し重量バランスを改善しています。この燃料タンクの移動によりリヤのディフューザー化や、マフラーのデュアルレイアウト化が可能となり、排ガスや排気音の抑制にもつながっています。BNR32のパッケージをイチから見直し、HKSの技術によって完成したのが「ZERO-R」なのです。
「ZERO-R」のポテンシャルに目を向けると、ファーストエディションはRB26DETT改2,688cc仕様にTO4Eツインのシーケンシャルターボで最高出力:約423ps、最大トルク:39.7kgmを発揮します。この車両はHKSテクニカルファクトリーの手により、アップデートが図られたエディション3と言われる仕様で、可変バルタイ(HKS Vカムシステム)の装備やGT2530ツインターボなどにより約600psまでポテンシャルが向上しています。このエンジンに組み合わされるのは、HKS・TILTON製ツインプレートクラッチ、軽量フライホイール、デフオイルクーラー、4.111ファイナル、トルクスピリットコントローラーとなっています。サスペンションなど足回りは、HKSスプリング、ショックアブソーバー、スタビライザー、フルメタルパッド、HKSマグホイール(9J-17)、ヨコハマAVS(225/45R17)となっています。
ボンネットに収められているRB26DETT型エンジンは、HKSテクニカルファクトリーの手によりフルチューンされています。徹底したバランス取りや加工により精度を高めたエンジンに最終的にはタービンはGT2530ツイン、Vカムシステムの導入により、最高出力は約600psまで高められたのが「エディション3」モデルでした。
「ZERO-R」を生み出したHKSのパーツを使った正常なアップデートモデルとなっています。
オリジナルの仕様では、TO4E改のツインターボで過給効率を高めるべくシーケンシャル制御がなされていました。その後、ボールベアリングのHKSオリジナルタービンGT2530ツイン化、出力は約450psから約600psへ大きく引き上げられていますが、Vカムシステムやボールベアリングターボにより、当時以上のレスポンスが引き出されているということです。
リヤバンパーからマフラーのテールエンドが突き出ていますが、空力性能を高めるためのデザインなのです。リヤフェンダーやトランクと一体化したデザインとなるリヤスポイラーは後端部をはね上げることでダウンフォースの向上させるためです。フロアはフラットボトム化して、高速域でも安定した走りを実現しています。
2シーター化されているのも「ZERO-R」の特徴で燃料タンクをリヤシート部分に移設し、BNR32の泣き所フロントヘビーというデメリットを重量配分の最適化を図ることで解消しています。スピードメーターは360km/h、タコメーターは1万rpmまでスケールが刻まれています。ステアリングやスカッフプレートには「ZERO-R」のロゴが入っています。
ブレーキはブレンボキャリパーを採用しています。レイズ製の鍛造ホイールに組み合わせるタイヤは、ミシュランパイロットスポーツでサイズは245/40R18です。
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「日産・スカイラインGT-R(BNR32型)」ベースのチューニングカーは、『Option』とのジョイント企画で誕生したモデルでした。総工費1億円とも言われていますが、当時プロトタイプ1台生産モデルが10台生産されたようです。当時の価格は、1,600万円と高価のため販売が振るわず販売されたのはブルネイの富豪に1台のみということです。あと1台はデモカーとしてナンバー取得、残り8台はHKS本社の片隅の屋外でブルーシートを被せられデッドストックとなっているようです。