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1986年に連載が開始された『シャコタン☆ブギ』。作品の舞台は、作者の出身地の高知県となっており、作中に出る主な場所では高知市から土佐市を経由し須崎市迄伸びる横波スカイラインが度々作中に描かれています。また、土佐方言の「おんしゃ~」や「~ちや」等が多く使われています。ただ、年月が進むにつれて土佐の方言がソフトなものになっています。 当初は車と女の子のナンパが大好きな主人公2人の「青春グラフィティ」としてスタートしていましたが、連載後半は車漫画として見ることも出来るようなエピソードが増えていきました。十年近くに渡って連載されているなかで、作中では時代背景の変化は反映されているものの(携帯電話の普及など)、登場人物の年齢はそのままです。すでに連載開始時には死語になりかけていた「シャコタン」(クルマの車高を下げる改造)や「エントツ」(クルマの車体よりも大きく上に張り出したマフラー)などの表現や、昭和の終わりには絶滅していたレーシングカーを模した改造車を日常利用しているシーンもあり、若いころを懐かしむ人たちから支持を受けました。一方で、作中で日産の「LY28型」レーシングエンジンが描かれるなど、チューニングカー好きにも人気の作品となりました。そんな昭和の田舎の不良少年たちを描いた「シャコタン☆ブギ」のなかから、登場キャラクターが乗っていたクルマをいくつか紹介。
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「シャコタン☆ブギ」の主人公は、親に買ってもらった初代トヨタ「ソアラ」に乗る、留年した高校2年生「ハジメ」と、ハジメを「先輩」と呼び慕う「コージ」のふたりです。
ソアラは車高を極端に下げてボディサイドから屋根よりも高い位置まで伸ばしたマフラーや、派手なエアロパーツを装着。ハジメはソアラに乗ってコージと一緒に日々ナンパに精を出しますが成功率の低い日々を過ごしていました。作中では3ナンバーと記されているので、登場モデルは当時の若者の憧れであり高値だった「ソアラ2800GT」と想像できます。車高を極端に下げてボディサイドから屋根よりも高い位置まで伸ばしたマフラーや、派手なエアロパーツを装着し、コージと一緒にナンパに精を出しますが成功率の低い日々を過ごしていました。1981年に発売された初代ソアラ2800GTは、2.8リッター直列6気筒DOHCエンジン「5M-GEU型」を搭載。当時の国産最速ツアラーであっただけでなく、デジタルメーターやオートエアコン、ドライブコンピューターを備えたハイテクマシンで、間違いなく国内最高峰のクルマであり、発売直後は若者だけでなく幅広い年齢のクルマ好きから憧れの存在になります。作中のソアラは、2トーンのボディカラーとボンネットやドアにゼッケンを描くなどした「グラチャン仕様」でした。1970年代中頃の「富士グランチャンピオンレース」に集まっていた改造車を模したものでしたが、ハジメのソアラが水玉模様になったころには、中古のソアラの価格も下がりはじめ、本当にソアラのボディを水玉模様に加飾する若者も多く出現しました。
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「シャコタン☆ブギ」の舞台となった町で、クルマ好きの少年たちの兄貴的な存在が「ジュンちゃん」です。実家が整備工場で職業は整備士。仲間たちのクルマを改造する際には工賃を取ることもなく、クルマの知識が豊富で走りの腕もあり、喧嘩にも強い町のヒーローとして描かれています。昭和の頃の田舎町にはこんな頼れる兄貴がひとりはいたのではないでしょうか。ジュンちゃんが乗っているのは1968年に発売された3代目の日産「スカイライン」で、プリンス自動車が日産と合併した後にデビューしたモデルです。オーソドックスなセダンスタイルでありながら、2リッター直列6気筒エンジンを搭載するためロングノーズとなっていたことで、伸びやかに見える外観が特徴でした。また、全体的に四角いスタイルから「ハコスカ」の愛称で呼ばれています。1969年には、2リッター直列6気筒4バルブDOHCエンジンを搭載した、初代「スカイラインGT-R」も誕生しました。
ジュンちゃんのハコスカは「スカイライン2000GT」に、2.8リッターの「L28型」エンジンを搭載し、さらに排気量をアップした3リッター仕様となっていました。作中では高知県内にある「横波スカイライン」で最速とされています。エンジンオイルクーラー取り付けのためにフロントバンパーレスになっている点や、ヘッドライトを覆うレーシングジャケットが装着されている部分も「グラチャン仕様」を模したものとなっていました。
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主人公のハジメの1歳年上で、ダンプトラックの運転手をしている「アキラくん」は日産「フェアレディZ」にぞっこんで、収入の多くを改造費に充てています。作中ではキレやすい性格に描かれていますが、仲間に対しては優しい男として描かれており、ボンネットやドアに「Yanky Mate(ヤンキーメイト)」とロゴを貼り付けているのが特徴でした。1969年にデビューした初代フェアレディZは「ロングノーズ・ショートデッキ」のルックスと、長いノーズの下に収められた6気筒エンジンが魅力で、日本はもちろん、北米市場では「Z car」としてとくに人気となりました。国内仕様のエンジンは2リッター、2.4リッターの直列6気筒SOHCと、「スカイラインGT-R」と同じ2リッター直列6気筒DOHCの3種のみですが、北米市場向けには2.6リッターや2.8リッターエンジン搭載車も用意されました。
アキラのフェアレディZはGノーズ(240ZGのフロントバンパーの愛称)にワークスオーバーフェンダーを装着し、ジュンちゃんのハコスカと同様に2.8リッターの「L28型」エンジンにオーバーサイズピストンを組み込んだ3リッター仕様です。さらに、ハイリフトカムシャフトや吸排気のビッグバルブ化とポート研磨、ウェーバーキャブレターを三連装するという、エンジンチューニングの定番仕様となっていました。また、アキラのフェアレディZのアルミホイールが盗難に遭い、自分のホイールが中古パーツ屋で販売されているのを発見するシーンがありますが、これは当時増え始めた自動車部品の盗難に対する作者からの警鐘だったと思われます。
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ある日、地元では無敵といわれていたジュンちゃんのハコスカが、峠であっさり抜きさられたという話が伝わります。その相手は「セブンのマユミ」という美女でした。じつはスナックのママであり、かつて「ロータリークーペのマユミ」の異名を持っていたベテランの走り屋でもあります。マユミの愛車である1985年に発売された2代目「サバンナRX-7」は、2ローターの「13B型」ロータリーターボエンジンが搭載されたピュアスポーツカーとして登場しました。
日本車初の対向4ピストンのアルミキャリパーをフロントブレーキに採用。ターボによる力強い加速と優れた運動性能を持ち、発売直後から日本国内はもちろん世界中で人気車種となります。マユミのサバンナRX-7は白赤2トーンのボディカラーで、後にリトラクタブルヘッドライトが、当時サバンナRX-7のカスタマイズで流行していた固定式に変更されるなど、作中でもその変化をわかりやすく描いていました。
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主人公であるハジメの中学時代の同級生である「ミチアキ」は、若者には高価だった日産「セドリック」をローンで購入するも事故で全損となり、ローン返済のためにアルバイトに精を出していましたが、当時の社会問題ともなっていた「ねずみ講」に手を出して失敗するなど、いかにも「昭和の若者」を色濃く描いたキャラクターです。
そんなミチアキの愛車は、1972年に発売され「ケンメリ」の愛称で呼ばれた日産「スカイライン」の4ドアです。4ドア仕様は「ヨンメリ」とも呼ばれています。このスカイラインは、ボディサイドにある「サーフィンライン」と呼ばれるプレスラインで塗り分けられた2トーンカラーに、トランクリッドに装着された単なる板のようなリアウイングなど、やはり昭和50年代の「グラチャン仕様」を模したものでした。