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富士スピードウェイで開催されていたTSレースで「トヨタ・スターレット」や「ホンダ・シビック」とバトルを繰り広げたB110型のサニーは、そのコンパクトなボディやエンジンゆえに現在でも多くのファンを虜にしています。1970年にデビューしたサニーのスポーティモデルの「GX」シリーズには、エンジンとして直列4気筒ターンフローOHVのA12型の1,200ccにSUツインキャブレター装着エンジンが搭載されています。そして、B110型のA12エンジンから高回転化に適した5ベアリング式へ変更され、当初から5ベアリング4気筒ターンフローOHVを採用していた「トヨタ・カローラ」のK型/3K型エンジンに対抗し、それを凌駕することを目指して改良されていました。また1971(昭和46)年4月、排気量:1,200ccのA12型エンジン主体だった2代目B110型のサニーに、排気量:1,400ccのSOHCのL14型エンジンを搭載した上級シリーズ「エクセレント」の2ドアクーペと4ドアセダンが設定されました。
そのレース仕様は、排気量を1,598ccに拡大し、1973年シーズンからのシリンダーヘッド変更に関する新規定に沿って4バルブDOHC 化を施し、ECGI(電子制御燃料噴射装置)などで最高出力:200psに強化、型式名をLZ14型としたレース専用のエンジンが搭載されました。このクルマは、LZ14型エンジンを搭載したサニーエクセレントクーペの初戦となった1973年日本グランプリ(TS-a クラス)で優勝を果たした北野元選手のマシン。このレースでは2位(都平健二選手)と3位(鈴木誠一選手)もエクセレントクーペが入賞して表彰台を独占、圧倒的な勝利となりました。
1973年の日本GPで使われたLZ14は、1,598cc(φ87.8mm:4.8mmボアアップ)という仕様。EGI仕様で最高出力200ps/9,400rpm、最大トルク17.0kgm/6,800rpmというスペック。シリンダーヘッドは鋳鉄製からアルミ合金製に変更され、16本の吸排気バルブもチタン製です。バルブ挟角が34°と狭く、燃焼室は理想的な浅いペントルーフ型で、圧縮比は11.5~12.0。軽合金製ピストンはフラットヘッドで深めのバルブリセスを持ち、鏡面研磨された鍛造スチール製コンロッドとセットで厳密な重量合わせが行われています。
カムシャフトの駆動系は、ギヤ式とチェーン式を組み合わせた独自の方式で、クランク側が4ステージのギヤドライブ、カム側がダブルローラーチェーンというメカニズム。カム駆動系を収容するハウジングが薄いのもLZエンジンの特徴です。ヘッドカバーは、後年のフラットタイプとは異なる丸味のある形状で、塗装も黒の結晶塗装となっています。