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アメリカのアップルが電気自動車(EV)の生産を自動車メーカー各社に打診していることをめぐり、日産自動車の内田誠社長兼CEOの発言が波紋を呼んでいる。発言が飛び出したのは、2月9日に行われた2020年4~12月期の決算会見でのこと。
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アップルの提携先としては最近、フォード・モーター、ゼネラル・モーターズ、テスラ、ホンダ、日産、ステランティスなどさまざまな観測が出ていた。しかし、その中からアップルと提携する企業が現れそうにない。その理由とは。核心となる問題は、アップルが自動車メーカーに対して、その技術的な専門知識を共有することに前向きかどうかということ。そうした知識があれば、自動車メーカーは電気自動車や自動運転車の開発競争で大きなプラスとなる。高速通信規格「5G」やクラウドコンピューティングといったテクノロジーがそれらに円滑に統合されていくからです。しかし、共有という考えはアップルには存在していないというのが多くの自動車メーカーの見方。コメルツ銀のフラワーズ氏は「アップルは何も共有しない。アップルから得られる恩恵は唯一、数の多さだけだ」と指摘しています。技術の共有や緊密な協力を抜きにした取り引きでは、自動車メーカーは台湾の電子機器受託大手ペガトロンやフォックスコンと似た状況に陥る可能性があるのです。2社はiPhoneの組み立てを行っているが、巨額の利益は獲得していない事実があります。同じビジネスモデルを踏襲することは、主要自動車メーカーとしては避けたいというのが提携に至らない点でしょう。
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日産自動車がアップルとの接触はあるのかと問われ、内田社長は「従来の自動車産業の枠を超えた活動が必須になっている。各分野で優れた経験を持った企業がコラボレーション、パートナーシップを選択する可能性はある」と、アップルカーの生産に肯定的ともとれる回答をしたことが明らかになっています。さらに、「100年に1度といわれるCASE(͡コネクティッド、自動運転、シェアリング、電動化)の時代、この変革をチャンスと捉えて、われわれ日産のDNAが持っている、人がやらぬことをやるという点においてチャレンジし続けたい」と述べ、アップルと提携する可能性に含みを持たせた。
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アップルはかねてから自動車業界への参入の機会をうかがってきた。本社があるカリフォルニア州では、トヨタ自動車の「レクサス」などを改造した車両で実証走行を積み重ねてきている。2019年には自動運転開発の人員を約200人削減することが取り沙汰されたが、2020年末には2024年のEV製造を目指していることが海外メディアで報じられ、アップルによるEV生産の可能性が現実味を帯びていた。ただ、アップルカーを実現するには、既存の自動車メーカーに生産を委託するなど自動車の製造設備が必要になる。韓国の現代自動車傘下の起亜自動車が持つアメリカ・ジョージア州の工場でアップルカーを生産する観測もあったが、現代自動車は2月8日、「アップルと交渉していない」との声明を発表したと報じられている。1月の段階で現代自はアップルとの交渉を否定していなかったものの、その後進展が見られないことが明らかになった。
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日産と同じ9日に決算会見を開いたホンダは、倉石誠司副社長が「新聞やテレビでの情報しかないし、(アップルカーが)どういう車かもわからない。コメントは差し控える」と話すにとどまった。トヨタ自動車の幹部も「アップルから話は来ていないし、来たとしても断る」とコメントしています。現代自動車(ヒュンダイ)やホンダ、トヨタと比べると、日産の内田社長の思わせぶりなコメントは明らかにトーンを異にするもの。アップルが手がけるスマートフォンやパソコンと異なり、自動車には高い安全性能が求められる。EVですら2万点に及ぶ部品の調達が必要で、自動車の量産にはノウハウと莫大な投資が求められる。EVで自動車業界の先頭を走るアメリカのテスラですら、一時は量産化に苦しんで倒産寸前に追い込まれたほど。iPhoneの生産をすべて外部に委託する「水平分業」を採用し、成功を収めているアップルが既存の自動車メーカーと組むのは自然な動きであると言える。
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日産にとってもアップルカーの生産受託にメリットがないわけではない。日産は世界初の量産型EV「リーフ」を世界で50万台以上販売。2021年夏には多目的スポーツ車(SUV)のEV「アリア」を投入し、アライアンスを組む三菱自動車とは軽自動車EVの開発に着手している。高いブランド力を持つアップルのEVが世の中に行き渡れば、EVの普及に大きな弾みとなる。加えて、日産はカルロス・ゴーン元会長時代に生産設備を大幅に拡充し、余剰な生産能力を抱えている。アップルカーの製造を受託すれば、こうした生産設備の稼働率を高められる。日産の業績は厳しい。2021年3月期の最終損益は5000億円を超える大幅な赤字となる見通しだ。スペインやインドネシアの生産工場の閉鎖などの経営再建に取り組んでいる最中であり、仮にアップルからの打診があればまさに渡りに船と言える。ただ、アップルと組むには課題もある。ブルームバーグ・インテリジェンスの吉田達生シニアアナリストは「仮に生産受託で合意したとしても、当初より量産台数のボリュームが増えると、生産設備の投資にも絡んでくる。(日産がアップルと)長期的かつ安定的に関係を築けるのかが見えにくい」と指摘。CASE時代が本格化すると、自動運転システムの開発で日産とアップルは競合関係になりうる。アップル側が技術の開示を拒み、製造受託のみを求めるのなら、日産は単なる自動車組み立てメーカーに過ぎなくなる。「日産としての価値を示すことに専念していく」。9日の会見で内田社長はこう強調したということです。