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1970年の第17回東京モーターショーで一般に公開されたスポーツカーのスタディ。「コスモ・スポーツ」の次世代モデルを担うミッドシップ・ロータリースポーツとして1968年に課外活動的に開発がスタートしています。開発にあたっては設計部部長の「松井雅隆」をリーダーとし、ボディデザインを「福田成徳」、インテリアデザインを「内田亮」、シャシー設計を「濱家照夫」らが担当。自社製の鋼管フレームに491cc×2の10A型ロータリーユニットをミッドシップ搭載のスポーツ。モーターショーの後、世界各地で展示されたものの帰国時に破損するという事態に。本社倉庫にそのまま放置されていたものの、2008年にレストアされ、現在はヌマジ交通ミュージアムに展示という経緯をもっています。
「マツダ・RX500」のデザイナーである「福田成徳」氏は、「これは単なるショーカーではなく、ミッドシップのロータリースポーツカーというコンセプトで、『コスモ・スポーツ』の後継を目指した試作車です」とコメントしています。当時は、国内は大阪万博に沸いており1970年の第17回東京モーターショーは、オイルショックを迎える前の自動車界にとってピークともいえるモーターショーでした。会場には「トヨタ・EX7」「日産・270X」「日産・126X」「いすゞ・ベレット1600MX」とウエッジシェイプデザインのスーパーカーがひしめいていたためです。その中にひときわ異彩を放つ黄色いスーパーカーの姿。それが、「マツダ・RX500」というコンセプトモデルだったのです。ロータリー・エンジンの実用化で名を挙げた自動車メーカーの「マツダ」が、創立50周年を記念して製作したミッドシップ・スポーツ。
「マツダ・RX500」のデザイナーである「福田成徳」氏は、「当時、設計部の部長だった松井雅隆さんが“オフライン5:5”というのを提唱されたんです。成功率50%でよい、半分は捨てる覚悟でよいものをつくろうという考え方ですね。社内では65年くらいから海外の動きを見て、ミッドシップをやらなければという気運がありました。そんな時にコスモの後継ぎをどうしようという話になって、ミッドシップはやらなきゃねと、わりと軽く言われた気がします。でも表立ったプロジェクトじゃないから有志でやろう、となる。手を挙げたのは私を含めた5人くらいでした。作業はすべて時間外。昼間は『ファミリア』をやりながら、すべて残業時間にやったんですよ。ショーの時の印象ですか? 他のメーカーと似てなくてよかった、ぐらいかな(笑)。このクルマはショーの後、世界のディーラーを巡る旅に出ています。そこで少々ダメージを受けたので綺麗にしようと、今のシルバーに塗り直したんですね」とコメントしています。
しかし、その後「マツダ・RX500」やこの流れを汲むようなミッドシップ・スポーツが世にでることはなかったのでした。「マツダ・RX500」のデザイナーである「福田成徳」氏は、その最大の理由として「コスモ・スポーツに比べて大きすぎること」と述べています。「マツダ」は、日本のメーカーではいち早く1965年に「R16A」というミッドシップのテストカーを完全自社開発しているパイオニア的存在ではあったものの、コンパクトにまとめ量産化できるまでの最適解は見つけられなかったということなのでしょう。そしてこの後に世界を襲うオイルショックがすべてを変えてしまったというわけです。「マツダ・RX500」のデザイナーである「福田成徳」氏は、この「マツダ・RX500」を振り返り、「イメージはレーシングカーと飛行機のデザインのミックスでした。よく見ると“キャノピー”とか“エアアウトレット”とか、“アフターバーナー”とか飛行機っぽいモチーフが多いでしょう。テールランプも未来カーにしたくて。法規的には成り立たないけど、ブレーキングを始めた時には黄色、止まる時には赤、高速で順調に走っている時はグリーンに光るようになっています。テールのイメージは映画『2001年宇宙の旅』の宇宙船。自動車離れしたイメージにしたかったのです。これこそ我々がベルトーネの教育を受けてきた証明ですよ。微妙で繊細な曲線、ラインを入れて、単調な線にしていない。このクルマはほかにも負圧の一番高くなるフェンダーミラーにインテークを開け、室内にフレッシュエアを導いたり、色々できたので面白かった」とコメントしています。こうして振り返ると、当時の技術とアイデアが凝縮された「マツダ」のコンセプトモデル「マツダ・RX500」は、今もなお輝き続けるエクステリアデザインであり、今後リメイクしてモーターショーに登場してほしいものです。