あわせて読みたい記事:【シルエットフォーミュラ】火を噴く日産ターボ軍団グループ5仕様
あわせて読みたい記事:【シュパン・ポルシェ962CR】悲運な生産6台のスペックと価格
あわせて読みたい記事:【ル・マン24時間耐久レース】日本メーカー参戦マシンを振り返る
名門「ジャガー」社が生み出した世界限定350台のみ製造の、V型6気筒ミドシップスーパースポーツモデルである「XJ220」に対して、更に多気筒で過激なV型12気筒ミドシップスーパースポーツ「XJR-15」が世界限定53台のみ販売されました。しかしここにきて、今回オークションに登場する個体は、それらのモデルよりも先に登場した始祖となるモデル「XJR-11」が出品されます。
この個体は、1989年の「世界スポーツプロトタイプカー選手権(WSPC)」用に「トム・ウォーキンショー・レーシング(TWR)」が製作したグループCカー用に開発され、前世代モデルとなる「XJR-10」とほぼ同型となるレーシングモデルで、僅か3台しか製造されなかったとても希少なモデルとなっています。
「XJR-11」は、「XJR-9」から採用されている大排気量のV型12気筒自然吸気エンジンから、オースチンローバー製となる3.5L V型6気筒ツインターボチャージャーエンジン(JA6型)へと変更され、最高出力750psを発揮する仕様へとなっていました。エンジンマネージメントシステムは1989年はザイテックを、1990年はボッシュ・モトロニックを使用していました。エンジンは、旧型のV型12気筒とアルミ製の構造よりも小型となり、「SambaメルセデスC11」に対抗するために改良が施されており、その質量にして僅か143kgと非常に軽量化されています。
シャシーデザインはトニーサウスゲートが行い、サウスゲート退任後の1990年はロス・ブラウンが開発を引き継いでいました。当初、ターボ・マシンはIMSA用として開発されており、WSPCにはNA・V12気筒エンジンの4バルブ仕様の投入が計画されていましたが、WSPCにもターボ・マシンを投入することになったようです。
しかし、これだけのハイスペックな要素を掛け合わせているため、デビュー戦にて華々しい優勝を飾るだろうと誰もがそう期待していましたが、デビュー戦は第4戦ブランズ・ハッチで5位で完走するものの、同じイギリスの「アストンマーティン・AMR-1(4位)」の後塵を拝することになっています。それ以降も熟成が進まず、「TWRジャガー」は最終戦のロドリゲス(メキシコ)では「XJR-9」にマシンを戻すという悲惨なことになっています。
翌1990年から「TWRジャガー」は、タイヤを永く使ってきたダンロップからグッドイヤーに変更しました。開幕戦の鈴鹿では序盤では「トヨタ」と激しい先陣争いを演じるものの、終盤ギアボックスとターボが壊れリタイヤに終わっています。第2戦のモンツァでは「メルセデス」の2台に次ぐ3位と初めて表彰台に上り、第3戦の地元シルバーストンでは、「メルセデス」の脱落があったにせよ、初優勝を1-2フィニッシュで飾っています。シーズン後半はタイヤ性能では劣る(ダンロップを装着)「日産」にしばしば上に行かれるも、年間ランキング2位を守り切ってシーズンを終えました。しかし、年間王者の「メルセデス」との差はおおきなものでした。
1991年、SWCの「TWRジャガー」は、「カテゴリー1(3.5リットル自然吸気エンジン搭載)」の「XJR-14」にマシンを移行するが、「XJR-11」は日本のサンテック・レーシングによりJSPCに参戦しました。しばしば好走を見せるが結果に結びつかず、第5戦菅生の6位がシーズンを通しての最高位でした。
なお、今回出品される個体は、グループCカーとして活躍後は「JD Classics」によって包括的に修復されており、当時のシルクカット/カストロールのパープルカラーとアイボリーホワイトによって仕上げられています。予想落札価格は約1.65億円~約2.2億円と非常に高額です。