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今や1980年代の名車として外すことのできない一台が「トヨタ・AE86レビントレノ」。コンパクトな車体にツインカムエンジンを搭載し、リジットサスペンションでFR駆動という基本スペックに無限といえるほどの豊富なチューニングパーツによって自分の好みに仕上げることが出来るマシンとしても人気です。1980年代から走り屋には人気でしたが、1990年代後半からは漫画「イニシャルD」に登場し人気が再燃しました。しかも、現在では中古価格は高騰しています。
その名車の登場は昭和58年で日本のモータリゼーションをリードしてきた「トヨタ・カローラ」は、生産累計台数を着々と伸ばし、名実ともに世界のカローラとして親しまれていました。そのカローラも昭和58年(1983年)5月のフルモデルチェンジを機に、セダン系は時流に合わせて居住性/経済性に優れたFF(前輪駆動)方式に切り替えられていましたが、FR(後輪駆動)方式を採用するモデルラインもまた残された。このFRモデルは、27(ニーナナ)系から親しまれてきたネーミングを継承。カローラ系はレビン、スプリンター系はトレノの名を冠したスポーツバージョンと位置づけられています。中でも1.6Lの4バルブDOHCエンジンを搭載するレビン/トレノシリーズの最強バージョンは、型式名がAE86だったことから、FRファンの多くから愛情をこめて「ハチロク」の愛称で呼ばれるようになりました。
基本的に同じコンポーネンツを採用するレビン/トレノのボディ構成は、3ドアハッチバック クーペと2ドアノッチバック クーペの2種類が用意された。市場では圧倒的に3ドアハッチバッククーペが多く出回っていたが、ラリー等の競技車両ベース車としては2ドアの需要もあった。これは、ボディ剛性がハッチバックより2ドアクーペの方が高いこと、車両重量も軽量であることが関係しています。またジムカーナなどでは、サイドブレーキを多用してターンすることも多いために、4輪ディスクブレーキのAPEXやGTVのグレードではなく、GTが好まれていました。レビン/トレノの外観上の差は、フロントを構成するデザインの違いが一番大きい。カローラレビンはグリル付きで、初期型GTアペックスには、エアロダイナミックグリルも採用されました。熱感知によって自動的にグリルが開閉する仕組みで、空力特性と暖房性能の向上が大きな目的でした。一方のスプリンタートレノは、よりスポーティ度を高めるために、全車にリトラクタブルヘッドランプが採用されている。両車の基本的ボディラインは、なめらかな曲線を基調に、ボディ前後を絞り込んだ流麗なデザインです。特にそのころ盛んに使われ始めたドアミラーを設定することで、空力特性的にも優れたCd値は0.35(3ドア車)を実現。
「GT-APEX」:1.6リッターモデルの最上級グレードで、リアワイパーやパワーステアリング、デジタルメーターが標準装備(2ドア、後期型はオプション)され、2ドア3ドアのレビン・トレノに存在。また前期型では2トーンカラーはこのモデルのみとなる。トランスミッションは前期型は5速MTのみだったが、後期型では5速MTのほか、電子制御(ECT-S)4速ATが設定されるようになった。
「GT-V」:1.6リッターモデルの競技ベース車両で、パワーステアリングとリアワイパーは非装備、メーターもアナログのみとなる。ステアリングギアのロックトゥロックが3.0回転となっており、ノンアシストであることも含め、他のグレードに比してダイレクトでクイックな操舵が可能。3ドアのレビン・トレノに存在する。トランスミッションは5速MTのみ。
「GT」:1.6リッターの競技ベースモデルでGT-Vよりさらに装備が簡略化され、リアブレーキが自己サーボ機能で拘束力に優れるリーディング・トレーリング式ドラムとなり、ステアリングホイール、およびシート表皮などが後述するAE85の2ドアレビン・トレノの各SE系グレードにほぼ準拠したものとなる。2ドアレビン・トレノに存在する。トランスミッションは先述のGT-APEX同様、前期型は5速MTのみだったが、こちらも後期型では5速MTのほか、電子制御4速ATが設定されるようになった。
「ブラックリミテッド」:GT-APEXをベースに装備をより豪華にした「黒の限定車」で、オプション品のパワーウインドウに専用ロゴ入りシート、サイドドアポケット、ゴールドアナログメーター、前後ボディエンブレムのゴールド化、ボディサイドにブラックリミテッドステッカーが装着され、後期型トレノにのみ存在し、生産台数は400台のみとなっている。
レビン/トレノのGT系に搭載されていたエンジンは1.6L DOHCの4A-GEU型で、当時の1.6Lとしてはトップクラスの最高出力は130ps/6600rpm、最大トルクは15.2kgm/5200rpmを発生していた。4A-Gはトヨタを代表するスポーツエンジンだった2T-Gの後継機として新開発された4気筒の16バルブDOHCエンジンで、1気筒あたり4個のバルブをカムシャフトがダイレクト駆動していた。DOHCのメリットを生かすために、圧力センサーで走行状況に適した燃料を算出する新方式のEFI-Dを採用し、吸入抵抗になるフラップ式のエアフローメーターが取り払われている。また、低中速域と高速域をバランス良く制御するための装置として、吸入ポートにT-VIS(トヨタ バリアブル インダクションシステム)を採用して、全域を効率良くカバーしていた。この高性能な4A-Gは、モータースポーツの入門用としてワンメイクレースやジムカーナ、ラリー等に広く普及していった。
エンジンレスポンスが優れていて、アイドリングからレッドゾーンまで1秒(0.98秒)とまで言われていました。極初期型の4A-Gにおいては、240度のカムプロフィール(後期型:232度)はリフト量が高く、3500rpmからレッドゾーンまでの吹け上がりが、鋭いセッティングとなっていると言われています。そのために初期型のカムシャフトを入れて、TRDガスケットにタコ足はチューニングの一歩として定番化していたようです。また、初期型4A-GCPUをリセットして繋ぐとリミッターが解除され、タコメーターのレッドゾーンを振り切るほどに変化していたようです。荒々しい初期型4A-Gは、ツインカムらしいフィーリングだったようです。これにフジツボ製やトラスト製のタコ足、マフラーを装着するのが定番カスタム。またTRD製の0.8mmのメタルガスケットや戸田レーシングのハイカムなどでチューニングするのも多かったです。
シャシコンポーネンツは当然ながらFFとは別設計となり、シンプルな構造となっている。サスペンションは先代を熟成させたもので、フロントが典型的なマクファーソン式ストラット、リアはラテラルロッド付4リンク/コイルのリジッドアクスル方式が採用されていた。それゆえにコーナリング時においては、リアが流れやすいためドリフト走行がしやすいと言われていました。ちなみにGTVグレードは、強化サス、クイックレシオのステアリング(アシストなし)、内装も簡素化でパワーウィンドウなしといった硬派な仕様でした。当時の定番のサスペンションチューニングは、タナベ製のショックにH150のバネの組み合わせ。ブレーキは、エンドレス製、ホイールはワタナベやロンシャン、SSRなどでした。ジムカーナなどではスーパーラップが好まれていました。まだ、峠小僧、いわゆるローリング族など存在すらしていなかった1983年頃に、すでにサスチューニングとしてダンパーやスプリング交換などのパーツのほかにブッシュ類をピロボールにするなど、レーシングカー顔負けのスポーツチューニングも行われていました。もちろん、この背景にはモータースポーツとして盛んであったフレッシュマンレース(ドリキン:土屋圭市がドリフトで連戦連勝伝説は有名)やワンメイクレース用にトヨタが開発してきたレース用パーツが豊富に揃っていたことも大きく影響していたようです。今ではプレミア価格で取り引きされるまでのクルマになりましたが、綺麗に乗るというよりは、ドライビングテクニックを磨くために乗り潰すクルマ、チューニングの基礎を学ぶというのが1980年代から1990年代のAE86に対するイメージでした。
AE86も今や高騰し続けている旧車の一台。1990年代までは、50万円も出せば程度の良い個体も多くありましたが、現在はフルノーマル車両、無事故車は皆無。漫画:「イニシャルD」の影響もあり、人気もレビンよりもトレノが上という変化もありました。現在は100万円~ASKといったところです。平均は200万円前後くらいです。今後も価格は上昇していくことでしょう。