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1980年代の刑事ドラマを振り返る上で「西部警察」は欠かすことが出来ないTVドラマです。しかも、登場する特殊車両は、「スカイライン」シリーズや「フェアレディZ」、「ガゼール」などの当時の人気モデルばかりが登場しています。今回は、これら「特殊車両」、とりわけ「マシンX」に注目してみたいと思います。西部警察に登場する「マシンX」のベースモデルとなっているのは、「日産・スカイラインジャパン(KHGC211型:後期 2000ターボGT-E)」となっています。劇中においてナンバーは「品川58い97-35」(登場時の一部の映像では「多摩58ね97-35」)ですが、「西部警察 PART-II」では「品川57た97-35」となっていることがありました。また、「西部警察 PART-III:第47話」では犯人により付け替えられ「品川58と41-52」となっていました。また第45話「大激走! スーパーマシン」で初登場、PART-III第47話「戦士よ さらば」で殉職した「M-X(エム・エックス)」マシンとなっています。ちなみにこのマシンは初代の大門軍団特殊車両です。52種類の特殊装置を搭載しているのが特徴で、主に大門団長が運転する車両です。
エクステリアは、大幅な変更は施されておらず、カンパニョーロ製マグネシウムホイールやフロントグリルの銃口、フォグランプ、大型サーチライト、リアでは無線アンテナなどが目立ったポイントです。
ポイントとなる特殊装備は多岐にわたりますが、まずはインテリアから注目してみると下記のようになっています。
室内で目立つマイクロコンピュータは、警視庁のデータベースとリンクしており、各種計算も行えるようです。西部署内の専用端末ともリンクしており、端末で検索されたデータを受信し車内で閲覧する事も出来るようです。
さらに車載モニターが装着され、マイクロコンピュータと連動して、前科者リストの検索・閲覧などが可能となっています。カーナビゲーションシステムも搭載しています。特殊無線機、警察無線は勿論、船舶無線や航空無線も傍受出来る仕様です。
大型のサーチライトを装備しており上下左右可動式となっています。シフトノブの後ろの操作盤で操作できます。
リモコン式スチルカメラも装備しています。NIKON製で採証用となっています。ロールゲージに取り付けられており、検挙に直結する証拠が記録されるようです。レーダー・スピード感知器は、フロントグリルの進行方向右側に設置されています。
フロントグリルに装備されている特殊発信ペイント弾発射銃。
防犯マーキングボールに電波発信機能を追加させたものも装備しています。特殊塗料から発信された電波は車内のモニターで確認出来る設計です。フロントグリルの進行方向左側に上下左右可動式のインパクトトレーサーを装備しています。車内のシフトノブ先端の赤い発射ボタンを押してカラーボールを発射します。ほかに自動車電話、増設燃料タンク(トランク内に150リットル分のタンクを装備)、遠隔操作式自爆装置(起爆スイッチは木暮課長が管理)、増設メーターコンソール、タコメーターや240km/h対応速度計、電圧計…etc。
ベースモデル:1980年式日産・スカイライン2000GTターボ・2ドアハードトップ(KHGC211型後期型、通称ジャパン)
※一部は形を変えるなどして実際の警察車両などでも実用化されている点は注目に値するところです。
「マシンX」のパトランプは助手席側の機械の上に設置されており、そのまま車内で点灯される仕様となっています。ただし「日産ギャラリー」で行われたお披露目式や登場初期のエピソードでは屋根の上に設置されており、一部のプラモデルやミニチュアカーではその状態で製品化されているものもあります。ただし夜間では車内でパトランプが点灯していると非常に眩しく、運転に支障をきたすために屋根に設置されたこともあるが(『PART-I』第45話)、夜間でも車内で点灯させていたこともあります(『PART-I』第69話や『PART-III』第47話など)。「マシンX」の助手席スペースはシートが外され機械が設置されているため、人が乗り込むことはできません。そのためパトランプの屋根への設置は運転手が行わなければならないが、走行中にそれを行うことは危険であるため、発車前に行うか一度停車しなければならない状態です。そのような時間を節約するために車内で点灯させることが前提になっていると考えられています。また、車内点灯することで緊急走行中のシーンで運転する俳優の顔に赤色の光が当たり、印象的な映像が演出できるという側面もあるようです。
出動の際は“エンジン音”-“暗闇に光り出すパトランプ”-“サイレン音”(当時一般的だったファンファン音ではなく「ポーピーポーピー」というフランス式)-ガレージオープンの順で姿を現します。また、始動は“キースイッチ”-“マスターキー”-“イグニッション”の順にONにし、最後にスターターボタンでエンジン始動というレースカー同様の複雑な方法となっています。西部署管内で、銀行強盗を襲撃して現金を強奪し、マーキュリー・クーガーで逃走するという事件(犯人役は片岡五郎・椎谷建治・鳥巣哲生)が多発。大門軍団の覆面車では、違法なチューンを施されしかもA級ライセンス保持者である犯人が運転するクーガーに追いつけず、谷刑事の指示により3台の覆面車(330・430セドリックセダン)で挟み撃ちしようとしたところ、車の運転に自信のある桐生刑事が独断行動に出て、覆面車でクーガーを無理に深追いしたため、民間人をはねるという不祥事が発生してしまう。このことがきっかけで、木暮課長は日産にマシンXの納車を前倒しさせる。かねてより、西部署には木暮の言葉から「捜査課に新人が来る」という噂が流れており、二宮係長以下軍団刑事達は「大門が更迭されて代わりの人間が来る。」と思い込んでいた。そんな折、遂にマシンXが納車され、大門軍団は新しい仲間の加入に喜ぶ(この時、大門は運転を桐生刑事に任せている)。
その日の夜、桐生刑事は早速マシンXのサーチライトを駆使してクーガーを追跡し、搭載されているスチルカメラで撮影するも見失ってしまう。なかなか姿を現さないクーガーに、大門軍団は焦りを感じ始める。 最終手段として、大門は松田刑事と源田刑事によるおとり捜査を決行し、クーガーをおびき出すことに成功するものの、犯人によるマシンガンの銃撃で2人が乗った車(230セドリックセダン)は横転、誘き出されたと知った犯人に松田刑事が拉致されてしまう。マシンXでクーガーを追跡する桐生刑事は、マシンXの特殊装置の1つである発信ペイント弾をクーガーに命中させ、レーダーによる追跡を開始するが、それでも何故か見失ってしまう。スチルカメラで撮影したクーガーの写真を見ていた大門と木暮は、全く違う場所で撮影された写真にクーガーと一緒に同じ大型トラックが写っていることに気付き、クーガーは普段この大型トラックで搬送されており、更にトラックの荷台はレーダー波を通さないアルミ製であると推測する。トラックのナンバーは既に二宮によって手配されていたが、一向に見つからない。そんな時、東名高速道路の川崎インターチェンジから、30分前に手配のトラックが通過したという連絡が入った。トラックの現在地は厚木付近であると推測した大門はヘリで出動し、木暮はマシンXに乗る桐生刑事に東名高速に入るよう無線で指示を出す。
大門は、東名高速道路の厚木手前を走る桐生刑事に、トラックが法定速度の時速80キロで走行していると仮定した時、マシンXが追いつくまでの時間を搭載してあるコンピュータで計算させる。すると、マシンXの最高速度である時速240キロで走ると、10分35秒後に追いつくという回答が出る。桐生刑事はマシンXを時速240キロに加速させ、東名高速を走行している一般車を次々と追い抜いてトラックを追跡するが、予定時間になっても該当する大型トラックが見当たらない。大門は、桐生刑事にすぐ近くの足柄サービスエリアを捜索するよう指示した。そして桐生刑事は、サービスエリア内で遂に犯人達の大型トラックを発見する。大門の指示で大型トラックを監視していた桐生刑事は、トラックの荷台からクーガーが出てくるのを目撃する。東名高速を走り出したクーガーを追跡するマシンX。犯人達は警察がここまで追跡してくるとは思っておらず、全速で逃げ始める。大門は、桐生刑事に御殿場インターチェンジからクーガーを一般道路に追い出すよう指示する。一般道路に出たマシンXは、追いついてきた大門の乗るヘリとの連携でクーガーを道路脇の山道に追い込み、遂に行き止まりまで追い詰める。クーガーから降りた犯人達は、松田刑事を人質にとって抵抗する。大門と桐生刑事は地形を利用して一時身を隠し、犯人を分散させる。不審に思って辺りを探し始めた犯人を仕留める大門と桐生刑事。人質になっていた松田刑事をクーガーから救出した大門は、クーガーに向けてショットガンを撃つ。クーガーは爆発炎上し、拳銃で抵抗していた最後の犯人も爆発に巻き込まれて死亡する。その直後、桐生刑事の後を追ってきた谷刑事、兼子刑事、源田刑事の黒パトがようやく到着し、炎上するクーガーを見て事件の解決を知るのであった。捜査課の課長室では、木暮と二宮が事件解決を喜びあう。安堵し背広の内ポケットからハンカチを取り出して汗をぬぐう二宮であったが、ハンカチと一緒に忍ばせていた退職願を木暮に見つけられてしまう。木暮は退職願を手に取ると、細かく破ってゴミ箱に捨ててしまう。西部署へ帰る大門軍団。桐生刑事がマシンXのコンピュータにキーパッドでコードを打ち込むと、モニターには「イツケン ラクチヤク(一件落着)」と表示される。
マシンXは、劇中設定上の台数は1台であるが、撮影用に製作された車両が複数あり、それぞれグレードが異なる。『PART-II』以降のエンディング映像では「ガゼール」と「サファリ」の後ろに「マシンX」らしきスカイラインが2台並んで走行しているのが確認できることを一例として(※画面左側を走行しているのがメイン車両で、ナンバーが97-35になっている。右側はおそらく予備車両の内の一台)、一説にはスタント用、撮影用など7台が制作され、『PART-III』における爆破シーンでは、状態の悪い同型車(ダッシュボードの形状等からC210前期型と推定)の外装をマシンX風に仕立てたダミーカーが使用されたといわれています。実際の撮影用車輌については、番組終了後、1984年(昭和59年)11月29日、広島市中区紙屋町のサンモール屋上にて催行された『さよなら西部警察フェア』に出展されたが、その後公の場に現れることはなかったため、現存するか否か、長年真相は不明とされてきた。しかし、2014(平成26年)5月、複数台用意されたマシンXのうち、日産自動車によって納入されたメイン車輌(グレードはターボGT-Eだが、途中からリアのエンブレムがGT-EXに変更された)が都内に現存していたことが明らかとなり、レストア中の姿が写真集(『西部警察LEGEND9』青志社)に掲載されました。メイン車輌は、『PART-I』第70話付近より運転席側ドアのストライプが欠け、フロントガラスに車検ステッカーがないことが映像で確認されるが、こうした特徴も現車と一致する。レストアを手掛けた業者によると、撮影終了後、20年以上石原プロモーションの倉庫にカバーをかけて保管されており、東日本大震災後の倉庫整理の際、かねて石原プロと親交のあった当該業者に委譲され、ファンの後押しもあってレストアの実現に至ったということです。その後『西部警察LEGEND10』では、一応は走行可能な状態までレストアが進んでおり、『西部警察LEGEND12』で「レストア完了」と報告されました。一部の装備品は、当時撮影に使われていたものが撤去され現存しないため、同型のものを新たに探し出して装着しています。
2016年(平成28年)1月9日~1月11日には、東京都調布市で開催された「石原裕次郎展」に出展され、約30年ぶりに公の場に姿を見せました。その他、長野県岡谷市のプリンス&スカイラインミュウジアムに展示された車輌をはじめとして、レプリカも多数制作されています。